私が親になって初めてわかるようになったことがいくつもある。

私の母親はずっと専業主婦だった。結婚するまでは仕事人間だった母が仕事を辞めたのは、私や弟に「おかえり」を言うためだったのだな、ということは今になってわかることだ。

そんな親の心子知らず、私は両親が共働きで学童に行っている友達が羨ましくて仕方なかった。学童ではおいしいおやつも出るし、たくさん遊べて楽しいんだよ、学童に行けないなんてかわいそうだね、と学童に通っていた友達がそう言っているのを聞いて、私はどうして自分の母親がずっと家にいるのかと内心では母親を恨んだものだ。その子はその子で、いつでも母親が家にいてくれる私のことが羨ましくてそんな風に言っていたのだな、ということも今になってわかることだけれど。学童だけでなく、両親が共働きという友達は、自分のカギを持っている子が殆どだった。自分でカギを持っている子は「カギっ子」なんて呼ばれ、みんなから羨望の眼差しを受けていた。カギっ子、というだけで大人に見えたあの頃である。

 ちなみに現在、我が家では私が家で仕事をしているので、「おかえり」と毎日子供たちに言えるが、子供たちはそんな毎日のことをどう思っているのだろう。学童に通っている友人たちを羨ましいと、あの頃の私のように思っているのだろうか。「おかえり」と言われて「ただいま」と交わす今の生活を当たり前のように過ごしている子供たちを見ていると、私の子供時代ってやっぱり幸せだったんだな、ということも今になってわかることである。